読書感想|心を測る

吉野 諒三(2001).心を測る──個と集団の意識の科学── 朝倉書店
『心を測る』 from 朝倉書店
個と集団とは?意識とは?複雑な現象の様々な構造をデータ分析によって明らかにする方法を解説
データの科学の実践方法を実例を基に紹介──本書感想
Borsboom(2005)によれば,心理測定には代表的な3つのモデルがあるとされます。
テスト分野でよく使われる古典的テスト理論,心理統計分野から発展した潜在変数モデル,一番近年発展しており数学的要素の強い公理的測定論です。
本書は3つ目の立場(公理的測定論)に基づく「心の測定」についての実例を紹介しています。
「心を測るとは何か」という話ではなく,「心を測るという営みとはどのようなものか」を,統計数理研究所の実施した国際比較調査をネタにしながら詳述した内容です。
ところどころ文章の繰り返しが多く,冗長な部分もありますが,逆に言えばその部分は「心の測定」にとって注意しなければならない箇所であるということの裏返しなのだと思います。
本書の目的は,「一方でデータの科学の実例を示すとともに,他方で国際比較調査を企画,実施する方々のための「実践的マニュアル」となること」です。
心のデータを扱う心理学者にとっては身の引き締まる想いをさせられる本でした。
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