読書感想|女性経営者が明かすラブホテルのぶっちゃけ話

読書感想|女性経営者が明かすラブホテルのぶっちゃけ話

阪井すみお・まお(2013).女性経営者が明かすラブホテルのぶっちゃけ話 彩図社

本書紹介 from 彩図社

ラブホテルを経営していると話すと、「オーナーは楽でしょ」とか「セックス産業って儲かりそうだよね」などと食いついてくる人がいる。かくいう私も最初の頃は「楽して、儲かって、ウッシッシ」と思い描いていた。

だが、オーナー兼店長としてとある海辺のラブホテルを取り仕切ることとなった私を待ち受けていたのは、己の欲望に忠実すぎるお客さまたちが巻き起こす、ちょっとエロくてカオスなトラブルの日々だった。

従業員をプレイに巻き込むお客さま、盗撮を警戒しているのか部屋中のリモコンや装飾を破壊するカップル、あまりにも○○すぎる大人のおもちゃ、監視カメラに写る覗き魔との戦い…。

本書は、欲望渦巻くラブホテルのディープな出来事と、オーナーだからこそ知り得たラブホテル業界の裏話をまとめた1冊である。

本書感想

人間とは不思議なもので,〇〇するなと言われると,〇〇したくなります。たとえば,日本でよく聞く有名な言葉としてはカリギュラ効果があります。禁止されるほど,禁止されたことをしたくなる心理現象を表す言葉です。学術的には,心理的リアクタンスと呼ばれています。一応,難しく言えば,個人が特定の自由freedomを侵害されたときに喚起される,自由回復を志向した動機的状態motivational state(深田,1996)。自由を奪われると,自由を求めるということです。似たような現象に,シロクマ効果もあります。「シロクマについて考えないでくださいね」と言われると,シロクマのことを考えてしまうという現象。人間の心理とは皮肉なものです。

ところで,未知の世界って何だか興味がわいてきます。身近にあるのによく知らない。でも,身近にあるからいつも気になってしまう。これってシロクマ効果?それとも,心理的リアクタンス?でも,身近なことについて知ることを誰からも禁止されていません。ということは,ただの野次馬根性なのかもしれません。

そういう野次馬根性全開で手にしたのが本書『女性経営者が明かすラブホテルのぶっちゃけ話』です。子どもの頃,近くを通るだけでドキドキし,大人になっても,近づくにつれてドキドキする,そんな魅力的な場所の話,知りたくないはずがありません。それも,女性経営者!未知な場所を未知な方から案内してもらえる,未知の2乗。いったい,どんな話が待っているのか。

観光スポットにあるラブホテル。本館とコテージで繰り広げられる珍事・怪事。女性経営者ならでは(?)の出来事。お客さんだけではありません。バイトも変人奇人。変な人が集まるのか,それともラブホテルが人をそうさせるのか。謎は深まるばかりです。珍事・怪事だからこそ,「続きはどうなるの?その先が知りたい!」という部分もあるにはあります。かゆいところに手が届かない…。だけど,だからこそ,本書で紹介される出来事が本当の話であると言えます。そりゃあ,経営者だもの,珍事・怪事に巻き込まれて経営が悪化するのは嫌だよね。でも,野次馬根性全開の私たちとしては,申し訳ないけど,もっともっと知りたい。いつの間にかラブホテルで渦巻く人間模様に飲み込まれてしまいます。

いつかラブホテルのフィールドワークをしてみたいなあ。そんな希望,あるいは,妄想が自然とわきました。あ,念のため一言付け加えておきますと,ラブホテル自体のフィールドワークであり,ラブホテルを使ったフィールドワークではないので悪しからずご了承ください。