読書感想|ガイドブック社会調査第2版

森岡清志(編)(2007).ガイドブック社会調査第2版 日本評論社
『ガイドブック社会調査第2版』 from 日本評論社
好評を博した初版を、「社会調査士」を目指す学生向けに全面改訂。データの処理、分析のやり方がさらに詳細に。
(統計的)社会調査を体系的に学ぶのに良い──本書感想
社会心理学出身のわたしは社会調査を体系的に学んだことはなく,ある意味つまみ食い的に学んできました。
さいきんは研究法について関心をもって調べ考えているので,(独学ではありますが)改めて体系的に学ぼうと思い,本書を手に取ってみました。
調査目的〜公表までを網羅的にわかりやすく解説してくれる良書でした。とくに,第11章「統計の基礎:統計で調査をあきらめないために」が良かったです。
統計的調査において苦手意識が強く現れるのはやはり「統計」の部分であり,そこを乗り越えられるかどうかが,統計的調査を理解するうえでカギになります。本書の11章はおそらくそのことを意識して,徹底的にわかりやすく書かれています。「数式は見るだけで苦手」という人でも,ゆっくり順を追って考えることができれば,基礎をきちんとおさえられるように書かれていて,いいなあと思いました。心理調査に携わる人も,この章は参考になります(というか,本書全体が参考になると思います)。
心理調査と社会調査では重視する点が異なります。たとえば,社会調査ではサンプリングを重視しますし,調査実施は組織的に(調査員を募るなど)実施されます。これは研究の大きな目的(心理調査:人間を知りたい,社会調査:(日本)社会を知りたい)の違いに由来するのであろうと思いますが,調査という点では通ずるところもあります。そういう意味で,(統計的)社会調査を体系的に学べる本書は心理調査屋さんにとっても有意義であろうと思います。
ちなみに,量的社会調査ではなく,「(統計的)社会調査」と私が書いている理由は本書の補論に記されています。この補論も本書の良さの一つです。
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