読書感想|出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと

読書感想|出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと

花田 菜々子(2020).出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと 河出書房新社

本書紹介 from 河出書房新社

夫に別れを告げ家を飛び出し、宿無し生活。どん底人生まっしぐらの書店員・花田菜々子。仕事もうまく行かず、疲れた毎日を送る中、願うは「もっと知らない世界を知りたい。広い世界に出て、新しい自分になって、元気になりたい」。そんな彼女がふと思い立って登録したのが、出会い系サイト「X」。プロフィール欄に個性を出すため、悩みに悩んで書いた一言は、「今のあなたにぴったりな本を一冊選んでおすすめさせていただきます」———。

実際に出会った人達は魑魅魍魎。エロ目的の男、さわやかに虚言癖の男、笑顔がかわいい映像作家……時には自作ポエムを拝見し、かわいい女子に励まされ、優しい女性のコーチングに号泣しながら、今までの日常では絶対に会わなかったような人達に、毎日毎日「その人にぴったりの」本を紹介。え、もしかして、仕事よりもこっちが楽しい?!

サイトの中ではどんどん大人気になる菜々子。だがそこに訪れた転機とは……。 これは修行か? 冒険か? 「本」を通して笑って泣いた、衝撃の実録私小説!

本書感想

「出会い系サイトで70人と会う」だけでも面白そうなのに,さらに「会った人に合いそうな本をすすめる」という一人ビブリオバトルさながらのクレイジーイベントを自分で始めてしまった著者の私小説。面白くないわけがありません。

冒頭,離婚の危機を迎えた夫婦関係について悩む(落ち込む?家出する?)話から始まります。この話はちょいちょい出てくるのですが,詳しくは触れられません(著者の2作目『シングルファーザーの年下彼氏の子ども2人と格闘しまくって考えた「家族とは何なのか問題」のこと』への布石かな?と邪推していますが,真相は定かではありません)。

そのような悩みがある中で出会い系サイトを発見し,いわゆる「出会い(恋愛とか結婚とか生関係とか)」のためではなく,世界を広げる「出会い」のために活動を始める。活動を始めることで,まさに世界が広がり,副次的に様々なことが起きる。そんな奇妙な体験が,1つの活動によってどんどん広がっていく様子がありありと描かれています。

何かマイナスなことがあったとき,人はどうしてもブレーキをかけがちです。ですが,人は活動を通してしか可能性を広げられません。マイナスが起きたら,何か新しい活動,すなわちアクセルを踏んでみる。その可能性を教えてくれる一冊でした。