読書感想|あなたの話はなぜ「通じない」のか

読書感想|あなたの話はなぜ「通じない」のか

山田ズーニー(2006).あなたの話はなぜ「通じない」のか 筑摩書房

本書紹介 from 筑摩書房

周りの人に等身大の自分を分かってもらいたい、相手と信頼関係を築きたい、前提の通じない相手ともきちんと話し合いたい、聞き上手になりたい、人を説得したい、相手の共感を得たい―。なかなか自分の「想い」を人に伝えるのは難しいもの。コミュニケーション上手になるためにはどうすればいいのか?基礎のキソから懇切丁寧に教えます。究極のコミュニケーション技術論。

本書感想

 コミュニケーションの手段は色々ありますが,私たちが相手に「直接」想いを伝えるコミュニケーション手段は2つ。話すことと書くことです。本書はその2つのコミュニケーションどちらにも通じる,想いを人に伝える手段を教えてくれます。

 手段といっても「Xしたらいい」「Yはするな」など具体的な行動だけを伝えているのではなく,「なぜ」「なに」「どうやって」を余すことなく教えてくれます。「何のために想いを伝えたいのか」「そのためには何を伝えたらいいのか」「それをどうやって伝えたらいいのか」,本書の言葉で言えば,「切実な動機」「経験に象徴される伝えたい内容」「表現技術」(p.243)の大切さを教えてくれます。

 コミュニケーションは一方通行ではないので,自分の「想い」を伝えるには相手の「想い」を汲み取る必要があります。「相手は何を思っているのか」(根本思想),「相手が言いたいことは何か」(問い),それを捉えてこそ,相手の「想い」と自分の「想い」を大切にしたコミュニケーションができるようになります。

 コミュニケーションがうまくいかないとき,それは相手の理解力がないからでも,あなたの表現力がないからでもありません。問いを共有し,思想に互いに寄り添うことができていないからです。相手とつながりあいたいのであれば,自分の立ち位置を把握し,決して上から目線にならず,根本思想に寄り添いながら,問いを共有する。そういう努力が必要なのです。言うは易し行うは難し。

 ちなみに,本書は学術論文の執筆・査読にも参考になります。なかなか論文で想いを伝えられない私にはピッタリな本でした。