読書感想|哲学な日々

読書感想|哲学な日々

野矢 茂樹(2015).哲学な日々──考えさせない時代に抗して── 講談社

本書紹介 from 講談社BOOK倶楽部

自分のこと、社会のこと、国のこと、世界のこと……、考えなくてはいけないのに、考えようとすると、どう考えたらいいかわからなくなって、前に進めない。考えあぐねてしまう。――こんな時代だからこそ、哲学者は、しかつめらしい言葉を使わずにこの本を書きました。人生で一番大切なものは何か、どうして自殺をしてはいけないのか、など、むずかしいけど、私たちが気になって仕方ない問題からも逃げずに、向き合います。

日本を代表する哲学者であり、東京大学での講義でも高い人気を誇る著者は、若い頃から坐禅を続けてきました。坐禅には、「本来無一物」(ほんらいむいちもつ)という考え方があります。丸裸の自分に立ち返ることができれば、そこに十分な力が現われてくる。坐禅をして、着ぶくれた余計なものを脱いでいく――この本を支えているのは、そうした引き算の思想です。

前半は、著者の普段着の姿や考えが綴られた50のエッセイを収録しました。哲学の授業で何を学べばいいのかから始まり、東大生に坐禅を教えるのはなぜか、そして哲学者の日常に起こるさまざまなことが描かれます。読んでいて思わず口をついて出てしまうのが、「へぇ」とか「うふふ」とか「なるほど」ということば。気楽に読み進めるエッセイですが、そうやって読みすすめるうちに自然と頭のこわばりが解けていきます。坐禅してみたいと思う人も注目! 坐り方や呼吸のレッスンもあります。

後半は、論理的な文章を書くためにはどうすればいいのか、異なる物語を生きる他者を理解するとはどういったことかなどに触れた10本の小品から構成されます。来し方をたどるとともに、言葉で考えていく実際の様子を伝える「「哲学者になりたいかも」などと考えている高校生のために」、また驚きから始まる哲学の原風景を語った「バラは暗闇でも赤いか?」は、哲学ではどのように思考が重ねられていくのかが見えてきます。

自分のこと、社会のこと、国のこと、世界のこと……、考えなくてはいけないのに、考えようとすると、どう考えたらいいかわからなくなって、前に進めなくなってしまう。考えあぐねてしまう。――こんな時代だからこそ、哲学者は、しかつめらしい言葉を使わずにこの本を書きました。人生で一番大切なものは何か、どうして自殺をしてはいけないのか、など、むずかしいけど、実は私たちが気になって仕方ない問いからも逃げずに、向かい合います。

ここに「ああすればこうなる」式のマニュアルや成功の技術はありません。でも、この本を読み終えたとき、知らぬ間に身につけてしまった鎧から解放され、本来無一物ゆえの力が宿るのです。

本書感想

 はじめに。サイトの内容紹介が長くて驚きました。想いが込められています。でも,想いを込める理由もわかります。

 先日,節約のために図書館で借りたはずが,購入を決意してしまった本があるという記事を書きました。その本が本書です。

 野矢先生はウィトゲンシュタインを中心とした哲学がご専門,論理学の本などもご執筆されています。わかりやすい,読ませる文章をお書きになられる先生です。

 その野矢先生が綴った日々のエッセイ(50回分)と,雑誌に寄稿したエッセイが本書には収録されています。内容の紹介はもはやサイトをご確認いただけたら十分かと思います。

 甥っ子が中学生になるまであと4年。4年後にもう1冊購入することになりそうです。