平均結婚期間は年々長くなっている

平均結婚期間は年々長くなっている

 日本では晩婚化が進んでいると言われています。晩婚化とは「結婚のタイミングが遅れていくこと」を指し,平均初婚年齢の推移から見積もられます。端的に言えば,平均初婚年齢が遅くなるほど,晩婚化が進んでいると判断されます。

 実際のデータをみると,1950年の平均初婚年齢は女性23.0歳,男性25.9歳であるのに対して,2010年の平均初婚年齢は女性28.8歳,男性30.5歳で,男女ともに約5〜6歳ほど晩婚になっています(図1)。

平均初婚年齢
図1. 平均初婚年齢の5年ごとの推移(内閣府:平均初婚年齢の推移から) 

 晩婚化が進むと,高齢出産になるとか,少子化が進むとか,いろいろと「問題点」が指摘されているのですが,今回は,晩婚化に関連しそうだけれどあまり指摘されていない(と私は思っている)点に着目してみたいと思います。それは,平均結婚期間です。

平均結婚期間:平均初婚年齢と平均寿命

 平均結婚期間とは,初婚から死ぬまでの期間のことです。もちろん,初婚の人すべてがそのまま一生過ごすわけではないですし(離別や死別の可能性),離別や死別のあとで再婚しないまま過ごす人もいます。ですので,平均結婚期間は,漠然とした,あまり正確ではない指標である点に注意が必要です(あくまで今後の思考の糧としての指標)。

 「死ぬまで」をいつに設定するかという基準はいくつかありえると思いますが,たとえば,平均寿命を「死亡年齢」と考えてみます。そうすると,今よりも晩婚でない1950年,女性の平均寿命は61.5歳,男性は58.0歳,平均初婚年齢は女性23.0歳,男性25.9歳でしたので,単純に計算すれば,女性の平均結婚期間は38.5年,男性は32.1年になります。一方,2010年の女性の平均寿命は86.4歳,男性は79.6歳,平均初婚年齢は女性28.8歳,男性30.5歳ですので,平均結婚期間はそれぞれ57.6年,49.1年です(図2)。1950年と2010年を比べると,15年〜20年ほど,平均結婚期間が長くなっていることがわかります。平均寿命は1950年以降だんだんと延びていますので平均結婚期間もそれに伴い延びています。

平均寿命から平均初婚年齢を引いた平均結婚期間
図2. 平均寿命から平均初婚年齢を引いた平均結婚期間の5年ごとの推移。平均寿命のデータは厚生労働省「参考資料2 平均余命の年次推移」から。

 ところで,平均寿命とは「平均してその年齢で死亡する」という意味ではなくて,「0歳時の平均余命」を意味しています。平均余命とは,「その年齢の人は,平均で残り何年生きられるか」を意味する指標です。たとえば,2010年の0歳の平均余命(平均寿命)は女性86.4歳,男性79.6歳ですが,20歳の平均余命は女性66.8歳,男性60.1歳です。平均寿命よりも少し長く生きていることが見て取れるかなと思います。

 図2はわかりやすさのため,平均寿命を「死亡年齢」として,平均結婚期間を算出しましたが,平均初婚年齢時の平均余命を「死亡年齢」とすると,図2よりも少しだけ平均結婚期間が延びます。なぜなら,上述した通り,ある年齢の平均余命は平均寿命よりも少し長いからです。

 細かい話は置いておいて,まとめますと,晩婚化は進んではいるけれども,平均結婚期間は長くなっているということです。1950年当時の結婚生活は30年〜40年であったのに対して,2010年現在の結婚生活は50年〜60年も続くということです。

晩婚化が進むと言うけれど

 少し昔は,今よりも死亡年齢が若かったため,早く結婚してもそれほど結婚生活が長くは続きませんでした。かりに,結婚するまで実家で暮らすこと(生家での生活)を前提とするならば,生家での生活の期間と結婚後の生活の期間はほぼ同じ長さでした(多少,結婚後の生活の期間の方が長いですが)。しかし,死亡年齢が延びた今現在,生家での生活の期間と比べると,結婚後の生活の期間が長くなってしまいました。あまり取り上げられませんが,この点は晩婚化や未婚化を考える上で大事なことなのではないかと思いました。

 私たちは人生の20年から30年を過ごすと,新しい家族をつくります。逆に言えば,家族が家族として密着したままで良い関係を築けるのは20年〜30年が限度と考えることもできるのかもしれません。それにもかかわらず,現代は結婚生活の期間があまりにも長くなってしまいました。そうなると,結婚生活を見通した結果,結婚が苦痛なものとして認識されるのも理解できるような気もします。

 「家族」概念の問い直し,あるいは,「家族」の流動性について考えることが,未婚化や晩婚化を理解するための一つの視点になるのかもしれないと,荒い指標をながめることを通して思いました。