読書感想|状況と活動の心理学

読書感想|状況と活動の心理学

茂呂 雄二・有元 典文・青山 征彦・伊藤 崇・香川 秀太・岡部 大介(2012).状況と活動の心理学──コンセプト・方法・実践── 新曜社

本書紹介 from 新曜社

人のこころの営みは,社会,文化,歴史,状況のエコロジーのなかに織り込まれている-社会文化的アプローチ,状況論,文化歴史的アプローチ,活動理論等と呼ばれる心理学の成果を,関連する研究領域を含めて精選のキーワードで多角的に解説。

本書感想

新曜社から出版されているワードマップシリーズ。2020年5月現在で50冊が同シリーズから公刊されています。本書はその1冊です。

激動の時代、日々新しいことばが生まれ、古いことばも新しい意味を帯びます。ことばの絶え間ない誕生と再生から浮かび上がってくる新しい世界像とは、いったいどのようなものでしょうか? 本シリーズは、真に時代を予兆することば、本質的な変化と持続を徴すことばを選んで、思想と文化、科学と芸術の諸領域における視野の交代、地殻の変動とその行方を描き出そうとするものです。どの一冊においても、読者は見通しのよい構成と平明な文章に導かれて、意のままに新しい感性の誕生に出会い、知の組替えの現場を訪ねることができるでしょう。

新曜社サイト「ワードマップ」

手元には8冊ほどあるのですが,それらを分類すると,「事典型」か「図帳型」に大別されます。

ワードマップシリーズは目次をご覧になると気付くかと思いますが,多様なキーワードが一覧になっています(たとえば,本書の目次をご確認ください)。当該書籍(テーマ)の中のキーワードが取り上げられ,目次はキーワードの索引として見ることもできます。

事典型とは,キーワードを端的に,かつ,わかりやすく紹介することを目指したものになります。たとえば,初学者がその書籍を入門書として読むことができるものが事典型です。

他方,地図帳型とは,キーワードについてエッセンスだけを取り出して書き記したものです。エッセンスはつかめますが,逆に言えば,エッセンスしかつかめないので,初学者が読んでもちんぷんかんぷんなところもあります。

この分類にしたがうと,本書は「地図帳型」です。多くのキーワードについて短いページで説明がなされますが,その説明の背景には膨大な知識ネットワークがあるため,読みこむためには,他書籍の参照が必要になります。

それを見越してかどうかわかりませんが,本書では文献紹介もあるため,その文献紹介を道しるべにしながら,本書をある種,「達成度テスト」のように活用する方法もあるかもしれません。状況と活動の心理学の基礎的・重要的文献を読み,本書の関連するキーワードを読む。そのキーワードがいまいち理解できなかったら,また関連書籍にあたる。というように,往復的な読書活動を通して本書を解きほぐしていくと面白いかと思います。一人読書会です。

ところで,直前の段落の文章は,浮気した後の言い訳のようだなと思いました。「他の人(関連図書)を見てやっと君(本書)の良さがわかったよ」。なんて。