読書感想|地獄の楽しみ方

読書感想|地獄の楽しみ方

京極 夏彦(2019).地獄の楽しみ方──17歳の特別教室── 講談社

本書紹介 from 講談社BOOK倶楽部

「今の十代の皆さんは、私が十代だった頃に比べても、はるかに優秀です。しかし、大人になった皆さんを待ち受けているのは地獄のような現実です。それはいつの時代も変わりありません。地獄を楽しむためのヒントを、もう地獄に堕ちている先輩が、少しだけお教えします」(京極夏彦)

「あなたの世界」は、言葉ひとつで変わってしまいます。SNS炎上、対人トラブル――すべては「言葉」の行き違い。語彙を増やして使いこなすわざを身につければ、楽しい人生を送ることができます。

地獄のようなこの世を生き抜くための「言葉」徹底講座。

大人前夜のきみたちへ。学校では教えてくれない本物の知恵を伝える白熱授業。「17歳の特別教室」シリーズ第5弾。

本書感想

言葉は偉大です。言葉があるから我々は考えを共有できるし,わかりあうこともできます。

しかし,言葉は常に不完全です。言葉は現実のすべてをそのまま表せるわけではなく,常に何かを削ぎ落としてしまいます。

そう考えると実は,考えを共有できているように見えて共有できておらず,わかりあえているように見えて何もわかりあえていないのかもしれません。

言葉は偉大です。言葉があるから我々は混沌とした世界を秩序立てて認識できます。

しかし,言葉は認識を制限もします。言葉は混沌とした世界をなんとか表す一手段でしかなかったはずなのに,言葉によって世界の認識が規定されてしまうこともあります。

そう考えると実は,世界を認識しているように思えて認識できておらず,秩序立てているように思えて混乱につながっているのかもしれません。

本書では,このような言葉の幸不幸,あるいは,メリットデメリットをわかりやすい語り口で教えてもらえます。それと同時に,言葉の大切さについても考えさせられます。

ここら辺の話は武田砂鉄『わかりやすさの罪』と通じるところもあります(読書感想はこちら)。

言葉についての話がメインの本書ですが,それ以外に,京極先生の人生訓も散りばめられています。「役に立つ」話ではなく,「役に立てる」ための話です。

特に「面白がろうと思えば面白い」という話は個人的には考えさせられました。
この世界を面白がるには,そして面白がってもらうにはどうしたらいいのか,そしてそのために何ができるのか。今年の課題です。