読書感想|わかりやすさの罪

武田砂鉄(2020).わかりやすさの罪 朝日新聞出版
本書紹介 from 朝日新聞出版
“わかりやすさ”の妄信、あるいは猛進が、私たちの社会にどのような影響を及ぼしているのだろうか。「すぐにわかる!」に頼り続けるメディア、ノウハウを一瞬で伝えたがるビジネス書、「4回泣ける映画」で4回泣く人たち……。「どっち?」との問いに「どっちでもねーよ!」と答えたくなる機会があまりにも多い日々。私たちはいつだって、どっちでもないはず。納得と共感に溺れる社会で、与えられた選択肢を疑うための一冊。
本書感想
本書は「わかりやすい」です。著者である武田砂鉄が「わかりやすさ」について批判しているだけの内容だからです。
しかし,これで「わかった」と思うと「わかりやすさの罪」に陥っています。「「わかりやすさ」について批判しているだけの内容」と言ったとき,では具体的にどういうことを表しているのでしょうか。本当に批判しているだけの内容なのでしょうか。それだけでは表せない何かはないのでしょうか。
言葉で表現することは常に何かを「わかりやすく」しています。しかし,「わかりやすく」した結果,見えなくなるモノがあります。それを忘れないためには「わかりやすく」したモノを重ねることでわかりにくくするしかありません。その実践を怠ると「わかりやすさの罪」に陥ってしまいます。そうならないための実践を著者が身を以て示してくれている。それが本書です。
何かを理解しようと思って「わかりやすく」する。しかし,それは理解の終わりではなく,理解の始まりであり,永久に続く理解の実践である。そのことを忘れないようにしなければならないのだということを教えてもらいました。
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