読書感想|ショッピングモールから考える

読書感想|ショッピングモールから考える

東 浩紀・大山 顕(2016).ショッピングモールから考える──ユートピア・バックヤード・未来都市── 幻冬舎

本書紹介 from 幻冬舎

 地方や郊外に乱立するショッピングモールは、これまで地元商店街の敵であり、コミュニティ荒廃の象徴とされてきた。しかし、果たしてそうだろうか? 実際は、小さな子どものいる家族や高齢者にも優しい公共空間としての役割を担っている。それは日本だけではない。世界の都市部でも、政治や文化や宗教や階層が異なっても、誰もが同質のサービスを受けられるショッピングモールが、理想の街の姿とされる。差異と格差が進む今こそ、均一であることの価値を見直すべきではないか。ショッピングモールを出発点に、変貌する人間の欲望と社会の見取り図を描く。

本書感想

 「世間で「論じるに値しない」と思われているものにこそ,新たな論点を見出し,語り始めること。それこそが哲学(知への愛)の原点であり,本書はその点で,「放談」であるがゆえに,逆にきわめて哲学的な本だと言える。」(p.261)

 日常の中にこそ哲学はある,どんなものでも哲学になると,哲学者であるニューマンは言ったそうです。まさに東の指摘と同じです。

 ショッピングモールにここまで論じることが秘められているとは全く思わず,読んでいて刺激的でした。世界がまさか「モール」で埋め尽くされているなんて。

 しかし,本書の深さを知るには,まずモールを見に行かなければならないと同時に感じました。ふだんショッピングモールに行っており,体験していたとしても,ショッピングモールを感じることはできていない。ショッピングモールの植物相なんて気にしたこともありません。

 語るためにはまず経験し,観察する。それをもとに考える。「哲学とは本当は,…世俗と接する好奇の営みだったはずなのだ。」と指摘するように,世俗と接しなければ哲学もできません。

 本書はショッピングモールを体験しながら読み,テーマパークを体験しながら読む,そして哲学する。街たずさえて行くべき一冊であると思いました。そういえば,本書を借りた図書館も「モール」だったなあ。