好きな顔の人が変人奇人ばかりです。

好きな顔の人が変人奇人ばかりです。

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好きな顔の人が変人奇人ばかりです。どうしたらいいでしょう?(女性)

「顔はタイプだけど,その人(性格)は好きになれない。私はどう対応したらいいのか?」という質問だと解釈しました。

パッと思いついただけでも,方向性は4つあるかと思いました。

(1)顔だけで選ぶ(変人奇人は諦めて受け入れる)
(2)顔を諦める(顔はタイプではないけど,「普通の人」を選ぶ)
(3)好きな顔,かつ,「普通の人」を探す
(4)相手の性格を変える

(1)と(2)は妥協なので,その選択をしたくないから,私にご相談なさったのだと思います。また,(3)もこれまで散々試してきたことでしょう。ですので,私からは(4)の話をさせていただきたいと思います。

性格を変える?!

「え?相手の性格って変えられるの?どうやって?」と思ったかと思います。結論から言えば「あなたの行動を変えること」によって相手の性格を変えられます。相手じゃなく自分を変えればいいので簡単です。

と言われても,ちんぷんかんぷんだと思いますので,以下で具体的に説明します。

他者の性格=行動観察からの推測結果

まず私たち自身には,「私は〇〇という性格だ」などの「私らしさ」の感覚があります。これを自己認知とか自己概念と言ったりしますが,この自己概念はいつ・どこであっても大きく変わりません。「昨日の私は私ではない」とか,「電車に乗ってるときと散歩しているときの私は違う」とかのようには思わないわけです(※)。すなわち,「私らしさ」というのはある程度一貫しています(これをアイデンティティと言います)。これは「私の性格」を見るときの話です。

(※)TPO(時と所と場合)によって「私らしく」振る舞えないなどは起こりうるかと思いますが,「私らしさ」がない,あるいは,TPOによって私は私ではないという感覚はないと思います。

他方,「他者の性格」を私が知るときには,「私の性格」を見るようにはいきません。なぜなら,私は私の意識を特権的に知ることができる一方,他者の意識をそのように知ることはできないからです。しかし,それでも私たちは「他者の性格」を知ることができます。では,どうやって知っているのかというと,他者の行動観察を通して「他者の性格」を把握しています(これを対人認知と言います)。たとえば,落ちた消しゴムを拾ってくれた相手に対して優しい人だなと思うなどです。「落ちた消しゴムを拾う」行動を見て(行動観察),優しい人(性格の把握)と推測します。私たちは他者の行動を通してしか「他者の性格」を知ることができません。すなわち,「他者の性格」とは,「他者の行動観察から私たちが推測した結果」と言えます。

ということは,「相手が変人奇人と思う」は,相手の行動観察の結果,相手の性格が変/奇妙と推測しているということになるわけです。

相手の奇人変人的行動の原因はあなたかも

以上のことを逆に言うと,行動を変えることによって相手の性格は変わります。なぜなら,繰り返しになりますが,私たちは相手の行動の観察を通して「相手の性格」を知るからです。

では,どうやって相手の行動を変えればいいのか。これを考えるために行動の原因について考えてみると,人間の行動の原因は多くの場合,環境です。あるいは,過去の環境(の集積)です。たとえば,私は今記事を書いていますが,「記事を書こう」という気持ちで書いているというよりも,「相談が来た」という環境が「記事を書こう」という気持ちを起こさせ,記事を書くという行動に至らせていると考えることができます。あるいは,過去に相談を受けて記事を書いた経験(環境→行動)に基づいてこの記事を書いているとも言えます。

ところで,あなたは相手にとっての環境です。あなたという存在自体が相手にとっては環境として機能しています。たとえば,こういう場面を想像してください。あなたが好きな相手とご飯を食べていたとします。そのときのあなたは,好きな相手のことを意識して,いつもより少食になってしまったり,いつもだったら豪快に食べるところを少し丁寧に食べたりといったように行動の変化がおきる場面が想像できるのではないかと思います。同じように,相手もあなたの存在によって行動に変化が起きています。

先ほど,行動の原因は環境だと言いました。相手にとってあなたが環境なのであれば,相手の行動の原因(の一部)はあなたである可能性があります。あなたにとって相手が変人奇人と思える行動をしているのであれば,それは過去の環境によるものか,今のあなたの存在あるいは行動が原因である可能性があります。(あなた以外の前でも相手が同じような行動を起こすなら,あなたではなく過去の環境が相手の行動の原因である可能性が高まります)。すなわち,あなたの行動→相手の(変な)行動→あなたは相手を変人奇人だと思う(「相手の性格」を知る)という流れが生じているというわけです。

ですので,「あなたの行動を変えること」で「相手の性格」を変えることができる可能性があります。

今までと違う行動をとることがポイント

あなたの行動を変えるために,まず,好きな顔の人の前でのこれまでのあなたを振り返ってみて,どのような行動をしていたかを書き出してみてください。そうすると,好きな顔の人(たち)の前で共通して行なっていたあなたの行動が見えてくるかもしれません(たとえば,変人奇人的な行動をしたときに声を出して笑っていた,など)。その共通したあなたの行動が相手(好きな顔の人)を変人奇人にさせていた原因かもしれません。ですので,その行動を変えると相手が変人奇人にならない可能性があります。

「そのような行動はない」あるいは「思い出せない」という場合は,相手(好きな顔の人)の前で,自覚的に今までとは違う行動をしてみてください。そうすれば,今までとは違う「環境」になりますので,相手も変人奇人にならずにすむかもしれません。

いずれにせよ,「今までと違う行動をとる」ことがポイントです。

変人奇人とは?

ちなみに,変人奇人とは性格であるという解釈のもと話を進めてきました。もし,変人奇人が性格ではない別の意味であれば,また話がちがってくるかと思いますので,その場合はまたご相談ください。

参考文献

渡邊 芳之・佐藤 達哉(1994).パーソナリティの一貫性をめぐる視点と時間の問題 心理学評論36(2),226-243.