開催記録|活動から生まれる数学〜数学に踊らされず、数学と踊る心理学を目指して〜

開催記録|活動から生まれる数学〜数学に踊らされず、数学と踊る心理学を目指して〜

先日、「活動から生まれる数学〜数学に踊らされず、数学と踊る心理学を目指して〜」というテーマでオンラインによる勉強会を開催しました。

心理学研究は多くのものが量的研究です。すなわち、「心」を測ったり、「心」を数え上げたり、その数値を処理したりします。このような営みにおいて、数学は欠かせません。心理学において数学はだいぶ深いところまで入り込んでしまっています。しかし、日本の大学制度上、心理学は「文系」です。ですので、「数学」が駆使されている論文をみると、中には、「うへぇ」や「ぐぬぅ」など、心の声がもれてしまうこともあるかもしれません。

心理学の中にかなりの部分まで食い込んでいる数学ですが、しかし当然ながら、心なるものをすべてまるごと捉えきる力は数学にはないと考えられます。数学でできることももちろんありますが、「所詮、数学でできるのはここまで」という限界があることも間違いありません。しかし、数学を完全に避けていては、その限界の理解もなかなかできず、「数学に踊らされる」という事態にもなってしまいます。これは、心という本来心理学が知りたかった対象が、数学(あるいは、数値)によってこしらえたココロノモデルに移ってしまうことを意味するのではないかと考えられます。

今回は、このような問題意識のもと、数学に踊らされないために、数学の効用と限界に触れる回を企画いたしました。心理統計の初歩に習う知識・概念を、あらためて数学という視点から学び直し、そのうえで、心理学における数学の意義について考え直したい。そのような思いのもと、研究会を企画いたしました。

以下はそのときの記録です。

研究会詳細

参加者:9名
開催日時:2022年10月8日(土)15時〜18時

ファシリテーター

袴田綾斗
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修士までは数学そのものを研究していました。現在は数学教育を研究しています。知識伝達型の数学教育の限界や,代替となる新たな数学教育の在り方を考えています。

概要

今回の勉強会では,上記のような課題意識を受け,まずは数学を「やったらそれなりにできそう」なものにするための一歩として,心理学と関連の強い確率・統計の基礎を学びます。ただし,講義のような形式で知識の伝達・習得を行うものではありません。数学教育研究の知見を生かして,ある題材の探究活動から知識をつくっていくような学びを目指します。

登場する概念や手法は,例えば「確率分布」「仮説検定」「区間推定」「条件付き確率」「ベイズ推定」などです。もちろん,これらに関する数学知識が網羅的に扱われるわけではありません。また,事前に習得しておくべき前提知識があるわけではありません―探究活動における学びは「必要なことは必要になったら学ぶ」が基本的な姿勢です。

このような学びを目指すため,企画内では参加される方々の「ん?それ何?」や「わからん!」が大事な要素になります。どうぞ,積極的に「ちょっと待った」をかけて探究に貢献してください。

感想

探究には決まった道がない。誰かの「問い」がみんなの「問い」になり、そこから新しい探究の道に進んでいく。

探究はその場の相互作用によってしか進んでいかない。だからこそファシリテーターの問いが大事だし、参加者の問いも大事だし、両者のやりとりも大事。探求では「場づくり」こそが肝心だなと感じました。

探究の面白さと難しさを体験できたとても良い会でした。

次回の研究会

次回は、『人類学とは何か』の読書会を開催いたします。各自で同書を読んでいただき、思ったことや疑問点など、感想を共有し合う、座談会形式での開催を考えています。

詳細は決まり次第、改めてお知らせいたします。

次回も、みなさんとともに考えられることを楽しみにしています。

主催

DigRoom:「心」「人間」「心理学」について考える研究会です。
|本会は日本心理学会の研究集会等への助成による助成を受けています。